・美術、骨董業界 狭すぎる… その1

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 どんな仕事でもそうかもしれませんが、美術商の世界は「とにかく狭い」と言われます。美術・骨董品など星の数ほどあるにもかかわらず、自分の扱った品がしばらくして目の前に戻ってきたり、オークションで見掛けたり。そして、品物にまつわる話以外にも「狭さ」を感じるエピソードがいろいろあるのですが…。

 私がよく足を運ぶ画廊に、以前ある作家の版画が飾られていました。誰でも知っている有名画家…というわけではありませんが、この手の作品を扱う美術商やコレクターにはまず知られている著名な作家の品です。お店での売値は忘れましたが、仕入値は確か20万円と言っていたでしょうか?

 この版画。何ヶ月かこの画廊に飾られていたものの結局売れず、画商の交換会で売られることになりました。20万円で仕入れた品ですが買値で売ることは難しく、何とか粘って18万円で落札されたそうです。つまり、2万円と交換会に払う手数料の損…。それでも処分しなければ現金になりません。「美術・骨董品を売る」→「メチャクチャ儲かる」と考えている方も多いようですが、損をすることなど日常茶飯事の仕事。「お金だけ考えれば、古美術商になどならず会社勤めした方が遥かに良かったな」と考えることが今でもよくあります(笑)。

※ちなみに、「20万円の品を18万で売る」。これで2万円+会の手数料損と考えている方はいませんでしょうか? 実は、それだけではありません。その品を仕入れて運び、家賃を払っているお店のスペースに展示・あるいは保管し、もう一度交換会に持っていって売りに出す…。この労力や経費も全て0(タダ働きと経費損)になるということです。私達は自営業ですから、こういった作業をして誰かから賃金やボーナスをもらうことができません。勿論、これで生活しているのですから利益を出してくれる品も多いですが、そういった品にも同様の労力や手間、経費はかかります。経費はともかく、例えば仕入れ作業や運搬、展示、販売(接客)、梱包等、働いた分の賃金を皆様ならいくらに換算されますでしょうか? ちょっと現実的な話になりますが、美術商の利益(賃金)や経費、美術・骨董品の「評価額」「店頭価格」「仕入れ価格」の関係をお考えいただくと、「美術品の取引」や「現実的な美術・骨董品の価格」というものが、別の側面から見えてくるのではないかと思います。

 話を戻し、それから数ヵ月後。私は某オークション会社のカタログにその版画が掲載されているのを見つけました。交換会で落札した画商か、その画商から買った人が出したのかはわかりませんが、ともかくそれは明らかに私が見た版画そのものだったのです。
※その2に続きます

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