・陶器でラグビー

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 このサイトでいろいろなエピソードを紹介してきましたが、今回はちょっと下らない話です…。

 以前、私は勉強とバイトを兼ね、美術品を中心とした梱包作業をしていました。ある日、美術品ではないものの現代製の高級食器がたくさんある~それを運ぶため梱包して欲しいという依頼があり、私達はその場所へ出かけることにしたのです。

 倉庫代わりのオフィスに案内されて驚きました。そこにあったのは「溢れんばかりの高級食器」。高級食器と言っても、考えてみれば現代製の量産品ですから数はいくらでもあるのでしょう。しかし、普段デパートや大手スーパーで高そうに展示されている商品がこれだけあると、何だか安っぽく見えるというか有難味がなくなるものです。それはともかく、その場にいる私達だけではとても処理しきれないと判断し、時折頼んでいた知り合いの学生を呼ぶこととなりました。

 後日、全員集合したところで梱包作業に入りましたが、やれどもやれども食器の山は減りません。この作業をする前は、こういった高級メーカー製のティーカップを「自分用に1つくらい買うか」と思っていたこともあったのですが、もう図柄も見たくないというほど大量に梱包したのです。結局、丸一日かけても作業は終わらず、翌日も梱包することになりました。2日目、私たちの責任者は所用で不在。依頼主側の人間もおらず、その場にいるのは私と学生バイト達だけです。当時、私はその学生達よりいくつか歳上といった程度で友人感覚でした。誰もいないのを良いことにベラベラ話しながら作業していましたが、単純作業の繰り返しでさすがに疲れてきます。時間が経つにつれ、皆無言で淡々と作業するようになっていました。が、しばらくすると急に明るい声が…。 

「○○さん(←私)、へ~イ、へ~イ!」。なんと、学生2人が梱包した高級陶器でラグビーのような「横パス」を演じているのです。これは勿論、「壊れ物」ということを前提としての下らないギャグでしょう。梱包した物はダンボール箱に詰めてまとめるのですが、ダンボール箱へ入れる~受け渡す作業を、小走りしながら「笑顔の丁寧な横パス」で行なっていたのです。本来ならバイト同士と言っても注意するところしょうが、その時は疲労とあまりの下らなさに、力なく笑うしかありませんでした…。 

 しかし次の瞬間、私はドキッとしました。私に向かって笑顔で横パスを繰り返す学生の後ろに、いつの間にか依頼主側の人が立っていたのです。依頼主の若いアシスタントがちょうど部屋に入ってきたのですが、高級陶器のラグビーに、もう泣きそうな顔をしています…。

 全く気付かず私に向かって笑顔で横パス繰り返す学生、その後ろで呆然と立っているアシスタント。両者が見える私は、「おい、後ろにいるぞ」とも言いづらく、どうしてよいのかわかりません。アシスタントと目を合わすわけにもいかず、結局そ知らぬ顔で淡々と梱包を続けたのでした。 

 事故にならなかったので笑い話として書いてしまいましたが、勿論これは反省しなければならない話でしょう。当然のことながら、やはり品物は大事に扱いたいものです。

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コメント

 読みながら、冷や汗かきました。

 しかし「高級陶器でラグビー」というブルジョワジーな響きに笑いました。(笑)

 コメント有難うございます。

 おバカな話ではありますが、やっぱり反省しなければならない話ですね…。

「高級陶器でラグビー」。響きはブルジョアでもやっているのが貧乏学生、見ていたのが貧乏業者というのが泣けます。

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