・ニセモノか、リメイクか? その2

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 前回の続きです。ベテラン古美術商、AさんとBさんの見解は途中まで同じだったのですが…。

 B:「作り直したとは言え、金具も木も古い物。壊れた箪笥を捨てるのももったいないし古い物を作り出すこともできない。これはこれで十分価値のある物だねぇ…」。

 ん?? 確かAさんは、この箪笥を「ニセモノ」の扱いとしていました。しかし、同じくベテラン古美術商のBさんは、「本物に準ずる」との言い回しで「十分価値ある物」としています。この世界に入って日の浅かった当時の私は少々混乱しました。目の前にある箪笥は、ベテラン業者2人の説明通りなら確かに原形を留めていない物です。金具と木材は、元々合っていないものかもしれません。もしかしたら、いくつかの箪笥からバラバラに寄せ集められた物かもしれないのです。しかし、素材が古い物であることは間違いありませんし、木材も金具も統一されていて使うには(飾るには)十分な、全体的に違和感のないものに仕上がっています。

 競りを見ていましたが、その箪笥はソコソコの値段で落札されたました。専門外で相場もわからず、今となっては金額も思い出せないのですが、「場の雰囲気」として私が覚えている感じでは、オリジナルの6割程度で落札されたように記憶しています。ということは、競っていた古美術商の多くはこの箪笥が後から手の加わったものと認識していたのでしょう。あるいは、箪笥をよく扱っていたAさんが怪訝な顔をして声を出さなかったため、警戒されたのかもしれません。Bさんは声を出していましたが、私の知らない別の業者が落札したのだけは覚えています。

 この箪笥。果たしてニセモノなのでしょうか? いわゆるリメイク品なのでしょうか…?

 今の私の考えでは、これを「きちんと説明して売れば」ニセモノとは言えないだろうと思っています。確かに、元の姿は損なわれた物です。厳密にオリジナルのみを本物とするなら、ニセモノ扱いされる品なのかもしれません。しかし、古い物を生み出すことはできませんし、捨ててしまうには惜しい。利用できるところは利用して、使っていただける方の手に届ける…。しかも、金具は時代ある良い仕事の物だし木も味良くなっています。もしこれが日用生活品や衣服、あるいは普通の家具なら何の議論もないでしょう。壊れたら直す、あるいはアレンジして別の物を生み出す…。

 ところが、当の箪笥はホンモノ・ニセモノの存在する「骨董品(美術品)」の範疇に入っているため、こういった「見解の相違」が発生してしまうのです。さらに言えば、「コワレモノ」とはちょっと別の位置にある「箪笥」だったからこそ起こりえた問題なのかもしれません。木材は一部が痛んでいても加工して使え直せますし、金具も壊れていなければ別の箪笥に付け替えられる。これが同じ美術・骨董品でも、陶器や細工物、あるいは絵画等で原形を留めない様な大きな直し・アレンジが入っていたり、いくつかの品から組み合わせてできた全くの別物だとしたら、評価は完全に違ったものになるでしょう。

 前回の記事の冒頭~「常識でわかるニセモノ」を書いている途中に思い出した話です~と記しました。その記事に書いた品物はリメイクでもなんでもない、箱書も作品もまるっきりニセモノというどうしようもない物です。が、同じ「ニセモノ」という表現が使われた品でも、一方は悪意溢れる贋作、一方は全て古い素材を使っていて十分使えるよう作り直された箪笥…。そうやっていろいろ考えていくと、世間で言われている「ニセモノ」の何割かは、本来の「ニセモノ」という範疇から少しずれたところに存在しているように思えてくるのです。
※その3に続きます

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