・競りの妙 その6

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 どういうわけか、私の茶碗は競り上がっていきますが…。

 しかし、会場にいた私はその理由に気付いていました。幸運にも、この商品には「書面による事前入札者」がいたのです。

 書面による入札…。一般参加型オークションというのは、ある決まった日時に開催されます。会場に来ようにも当日都合の悪い方・遠方にいてこられない方は、その場にいる参加者より遥かに多いかもしれません。そして、そういった方が競りに参加するには「この金額までなら欲しい」と書面に数字を書いて入札する(あるいはメールや電話で関係者に伝える)か、当日電話で競りに参加するしかないのです。電話参加というのは、比較的高い品やどうしても欲しい品で利用するケースが多くそれほど使われませんが、手軽で匿名性も高い書面入札は参加者によく利用されています。

 書面による入札者~その代理人であるオークション社員と競っていたのは、会場に座っていた中年男性。私の茶碗は、この男性と代理人の間で競られていきます。「32000円、35000円…」。実は、最終的にどちらが落札したかはっきり覚えていないのですが、私の茶碗は更に競ったところで落札されました。処分のつもりで出した茶碗が、予想外の利益をもたらしてくれたのです。

 この茶碗に「書面」で高く入札したのは、趣味でお茶をされていて、しかもそれほど道具に詳しくない方だったに違いありません。僧侶の箱書があり、それらしい茶碗でしかも箱が綺麗。「古物の値段」ではなく「茶道具の値段」としてやや相場から外れた価格を入れてしまったのでしょう。趣味でお茶をされている方から見れば、数万程度の道具は言ってみれば「手頃な品」です。

 ただ、ここで疑問があります。当日参加できない方~つまり今書いた「書面による入札者」が、オークション開催前に高い値段で入札してしまう可能性はあるでしょう。カタログに掲載された私の茶碗は「成り行き」と書いてあるだけで、予想落札価格は書いてありませんでした。詳しくない方が相場を知るには、やや情報不足だったのです。

 しかし、会場にいた中年男性は、直前に出ていた茶碗の競りを見ていたはず。例え相場を知らなくても、状況を見ればこの類の茶碗がいくらくらいなのかわかりそうなものです(よほど観察力がなければ別ですが)。その場にいない書面入札者はともかく、なぜ会場にいたこの男性は相場を踏み外してまで私の茶碗を追い続けたのでしょうか?  理由はいくつか考えられます。
※その7に続きます

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