・競りの妙 その3

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 結局、ネットオークションでこの茶碗が売れることはありませんでした。

 お付き合いで買ったとは言え、この茶碗は単品で競り落としています。「いくらでも良いから売れてくれ」と思う反面、「在庫にしてからそれほど時間も経っていないし、買値は割って欲しくない」という思いも少しはありました。「下からやった方が競り上がる」とわかっていながら、そんな気持ちが低い価格からのスタートを躊躇させたのです。 

 再出品に際しては買値の1万円としました。買値ですから、この価格で落ちたらわずかながらも手数料(&手間)損。ところが、交換会の買値に設定してもこの茶碗は落札されることがなかったのです。確かに会の最中は「仕入値とすれば少し高かったかな?」とは思いましたが、ありきたりの品物においては、古美術商の仕入れる価格とネットオークションの価格が接近している~もしくは逆転していることを表す一つの例なのかもしれません。もっと下から始めようか、別の会に出そうか…。 

 ちょうどその頃、私はある一般参加型オークションに出品する準備をしていました。こちらは数万~数十万の物を十数点。処分品もありますが、オークション用に狙って仕入れた物もあり基本的にはマズマズの作品が揃っています。私は、この茶碗をネットでも交換会でもなく、ついでにこのオークションへ出そうかと考えました。幸い、このオーションは比較的安い物でも受けてくれる場合があり、売値に手数料が掛かるだけで写真掲載料等の高い諸経費もありません。出品物の中では一つだけ極端に安い品となるのでちょっと考えましたが、提出直前の目録へこの茶碗を付け足すことにしたのです。 

 勿論、この茶碗1点だけなら出品を受けてくれなかったことでしょう。オークション会社というのは手数料で儲ける商売をしていますから、値段の低い物はなかなか受けてくれません。が、今回はマズマズの品を十数点出していた~トータルで考えればある程度の金額になることもあって、この茶碗の出品も通してくれました。オークション側としても出品者は顧客であり、十数点あるリストから安い茶碗1つだけを外せなかったのでしょう。

 オークションというのは、一応売り手が「リザーブ(最低落札価格)」を希望できます(もっとも、それが高い値段なら「もう少し低くなりませんでしょうか?」「この値段ではお受けできません」ということにはなりますが…)。しかし、ネットオークションではスタート価格を買値にした私も、このオークション出品時には「最低落札価格~成り行き(いくらでもよい)」として出品しました。ネットと違い、一般参加型オークションには「美術品を買おう」という人が来場します。わざわざカタログを買ったり会費を払ってまでして参加するのですから、少なくとも買う意思のある人が集まっているのは間違いないのです。そういった中で、品物が極端に安く落ちることは稀にしかありません。ネットに比べて高い手数料というネックもありますが、それを差し引いてもソコソコの値段では売れてくれるのです。また、このくらいの品物にリザーブをつけるのは、ちょっと恥ずかしいもの。私の場合、リザーブはある程度価値の認められる品やマニアックな商品~わかる人が少ないかもしれない品へ付けるようにしています(ただ、価値ある美術・骨董品はリザーブなど設定せずとも必ず相場かそれ以上には行きます)。

 ネット出品の際は何かとセコく計算していた私も、このオークションに出品した時点で既に損得勘定は消えていました。「成り行き」での出品…。千円だろうが2千円だろうが、競りが止まった時点で落札されるのです。私は他の出品物~比較的高い美術品の売れ行きばかり気にしていました。
※その4に続きます

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