・バブルどころじゃない現代美術 その3

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 前回の続きです。画廊主の話に、私は一昔前のある出来事を思い出していました。

 現代美術ファンなら、東京都現代美術館に足を運ばれた方も多いでしょう。木場にある、大型のコンテンポラリー・ミュージアムです。そこに収蔵されているロイ・リキテンシュタイン…。と書けば、以前の騒動を思い出されるアートファンがいらっしゃるかもしれません。

 平成6年、リキテンシュタインの「ヘアリボンの少女」を約6億円で購入したのですが、都議会の一部から「漫画みたいな絵なのに高すぎる」と槍玉に上がるなど、ちょっとした騒ぎになったのです。ちなみに、この議会の発言を非難するつもりはありません。嫌味ではなく、どんなものでも興味のない人に価値の理解は難しいでしょう。それにこの絵、確かに漫画の一コマではあるんです。「こんな絵に6億も出すなんて…」と考える議員や世論があるのも理解できなくはありません。

 が、名実共に世界的人気作家の作品~しかもマスターピースというある意味「値段を付けられない」「欲しい人(美術館)はいくらでもいる」という作品を、一見法外と思える金額を払ってスパッと買ったのは美術館側の英断だったと言えるでしょう。美術館ですから利益を出そうと買っているわけではないでしょうが、購入者側には「購入額に見合うだけの(あるいはそれ以上の)価値がある」という確信が当時からあったと思うのです。

 前回の記事で、ウォーホル作品の高騰ぶりを書きました。ポップアート界の代表的作家としてウォーホルと並び評される場合も多いリキテンシュタインですが、彼の場合はここにきて高騰、というよりも「高い評価のまま、相場が落ちずに上がり続けている」といった感じでしょうか? ちょっと表現は違ったかもしれませんが、どちらにしても極めて人気が高く需要の多い作家であることは間違いありません。今から10年ちょっと前、傍から見て「異常な購入価格」「バブル価格」と白眼視された6億円の「ヘアリボンの少女」も、今となってはこの価格で買えないことでしょう。現代美術品だから一概に高いというわけではありませんが、海外の一流オークションに出たら倍どころじゃないのではないか(遥かに上?)という気もしています。

 さて、「その1」で、>>ある作品はやはりその頃の落札価格が「バカ高」で、落ち込んだ価格が今も全く回復していないのです。 と書いています。世界的に美術品の売買が好調な中、価格が落ち込んで戻らない作品…。こちらの話にも触れましょう。
※その4に続きます

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コメント

こんなすごい話を聞きますと、自分の持っているサイズが大きすぎて飾る事も出来ない一連の村上隆氏のポスターでさえも、将来的にはと期待してしまいます。甘いですね。。

 コメント有難うございます。

 このコメントに対する返信は、折を見て『裏美術売買』に記事として書きましょう。

 ちょっと後になるかもしれませんがお楽しみに。

何年か前になりますが、大阪市でも似たような事があったのを思い出します。
大阪市が古九谷の大皿を二億円で購入したことが新聞に出ていました。
世間では色々言われたようですが、うちでは「よく買った!褒めてやるぞ!」と思わず言っていました。
今その大皿は日本陶磁室に常設展示されており、点数の少ない展示室で存在感を発揮しています。
特に大阪では出光美術館が無くなってからは古九谷の大皿を美術館で目にする機会は少なく、今でも大阪市が購入した事は賞賛したいです。
訳の分からない事にお金を使うより遥かに文化的で有意義な税金の生かし方でと思います。

 コメント有難うございます。

 税金・予算の有意義な使い方や評価についは、個々の趣味や嗜好があるのでなかなか難しいところだと思います。素晴らしい古九谷や現代絵画でも、不要な人にはやはり1円の価値もないことでしょう。

 その点をテーマとして記事を書くと、全く別の話になってしまうかもしれません。本記事で美術館の購入を「英断」と書きましたのは、文化事業的な側面を評価するというわけではなく、あくまで「購入」という判断に対してです。

 勿論、tokusa様のお話は私も古陶磁好きとして同感に思います。興味のない人にとって価値はなくても、それが高い価値を持った物であるというのは間違いありません。ワケのわからない施設やモノにお金を使うより、遥かに有意義なことです。

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