・骨董 儲かるでしょう~ その2

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「骨董とかって、儲かるでしょ~?」。たまに言われるこの言葉、以前から不思議に感じていました。どこから「美術商=儲かる」「骨董屋=儲かる」という発想が出てくるのか…? そんなに儲かるなら、世の中もっと多くの人が古美術商をやってるはずです。

 今でも「儲かるでしょ~」など言う人がいると「じゃあ、やったらどうですか?」とツッコミたくなりますが、正直書かせてもらうと、私はこの言葉であることを判断するようにしています。それは、その人が「計算できる人かどうか」(端的に言えば「相手にすべき人かどうか」)ということです。

 少し話は逸れますが、私の同級生で東大大学院を卒業後、某国立大で助手(もう昇格したかな?)をやっている親友がいます。東大生と言っても、その人自体は頭が良いかどうかわかりません。頭の悪い私が書くのもなんですが(汗)、勉強ができることと物事の道理がわかることは別の話です。しかし、その友人は「勉強もできるし頭の回転も速い」という人間でした。ちょっと言い方を変えれば「真面目な話もできるし、シャレも通じる」といった感じでしょうか?

 一時、お互い忙しく離れた場所にいたのですが、その友人と久しぶりに会ったときの話。私が「古美術商をやっている」と言うと、彼は「食べれるの…?」と、ちょっと心配そうな顔をして言ったのです。その友人は、瞬時に「誰かから給料をもらえる仕事でないこと」「仕入れて売ることの難しさ」を、自分が体験した話というわけではなく常識的に判断したのでしょう。

 考えてみれば、彼が心配したのも無理ありません。どの仕事も厳しいのは当然の話として、会社員や公務員なら仕事をすれば「給料」「ボーナス」が出ます。しかし、当然ながら自営業の古美術商には給料もボーナスもありません。何日かにわたって働き、扱った品がトントン程度で売れる(タダ働き)、あるいは損をして売ることになる(タダ働きの上にお金も損)ことも日常茶飯事です。

 勿論、損をしても自分のせいですし、仕事ですから利益が出る場合の方が多いのですが、もし赤字自治体で「赤字なんだから公務員の働いた給料は0」となったら騒動になるでしょう。まあ、ちょっと意味合いは違うかもしれませんが、ともかく古美術商を含めた自営業の場合、赤字となれば利益がないのは当然の話。効率良く稼ぐことだけ考えたら私は古美術商になっていなかったと思いますし、今すぐにでも転職します(笑)。

 さて、話を「郵便のおじさん」へと戻しましょう。
※その3に続きます

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コメント

はじめまして。ゆきえと申します。

本日、古物商について検索しておりましたら、こちらのブログを拝見しましたので、コメントを書きました。

私は石川県金沢市に住んでおります。
金沢市内にも骨董店が数件ありますが、昨今、茶道の先生が、茶道の教授の資格のあっても、跡を継ぐ者がいなくて、茶道の道具を売りにくるというひとが多いそうです。
店内には茶道に使う道具があふれ、いくらいいものでも売れなくて、溜まっていくいっぽうだと、店主がなげいていました。
そういう私も、以前茶道をしていたのですが足に病気を持ち教えることができなくなったので、道具を売ることにしました。
お弟子さんに教えていたのですが、跡を継いでもらえないので、道具を売ることを申し訳ない気持ちになりました・・・

バブルの頃は、飛ぶように売れたのに、現在はこんな感じなので、古物商されているかたは、いったいどうやって生活費をかせいでいらっしゃるのでしょう?
オークションに出品されているのですか?
店主に細かいことを聞けなくて・・・ちょっと気になったものです。すみません。

コメント有難うございます。

まず、茶道についてですが、昔と比べて茶道をされている方が減っているというのは確かにあるのでしょう。廃れることはないと思いますが、茶道以前にそもそもが少子高齢化の日本です。また、大きく見れば似たような理由で、かなり以前から掛け軸にも値段が付かなくなっています。和室が少なくなり(床の間がなくなり)、また趣味も大きく変わった現代で、掛け軸を飾ろうとする世代がいないのです(10年以上前の投稿ですが、2004年9月の「売れづらくなってきた掛け軸」をご一読下さい)。

「バブルの頃は飛ぶように売れた…」と書かれていますが、事実その通りです。が、私が本格的に美術商として活動し始めたのはバブルが弾ける頃~不景気の時代ですし、また日本のみならずバブルと関係ない海外にもたくさんの美術商がいて、景気の波はあっても仕事を続けています。バブルに乗って大きな利益を出した美術商は多いですが、美術商の仕事自体はバブルが前提ではないです。

1つ書きますが、美術商というのは決して「儲かる仕事」ではありません。ゆきえ様がコメント下さった記事にある通り、お金のことだけ考えたら私も(大変ではあるでしょうが)会社員なり公務員になっていました。好きだからこそ仕事にしている…という理由が大きいと思います。

こう書いた上で実情をお話ししますと、美術商には美術商のマーケットがあるのです。お店で売れなくてもネットオークションに出さなくても、美術商同士の交換会・あるいは直接取引で利益を出すのは可能です(処分になってしまうこともありますが)。例えばお店で売れなかったにしても、それを交換会に出せば、良い茶道具なら必ず値段がつきます。買う方も美術商なのですから、名品・良品に値が付かないことはありません。通常の美術商であれば、茶道具の買い取り依頼があった場合、業者間の流通価格より下の値段で買い取ることでしょう。美術商に限らず、物販の場合は販売価格より低く仕入れなければ仕事になりません。

茶道具に関しては、その個々の価格が以前に比べて下がったということでしょう。ならば現在の相場で考え、それよりも低い価格で仕入れれば良いということです。ただ、以前の相場が頭に残っていたり、名品と惚れ込んで高く値踏みをしてしまったり、今となっては売れづらい品を買ってしまったり、あるいは相場の高い頃に仕入れた品がずっと手元に残っていたり…こういう場合は厳しいですね。働いても、結果がマイナスになるケースがあるのが自営業のツライところです(笑)。

逆に、若い方にも人気がある現代美術や、陶芸であれば新たな人気作家等、いまの時代だからこそ相場が上がっている作品もあります。需要がある品を扱う、現在の相場に合わせた金額で仕入れる。踏み外さなければ、仕事にならないことはないと思います。
※ちょうどいま連載している記事にも書いていますが、一昔前と比べて、老舗美術商でもネットオークションに出しているケースが増えてきましたね。そういった売り方も選択肢の1つに入ってきたのでしょう。

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