・2011年の美術売買

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 ほとんど休止状態で現在書きかけの記事もそのままになっていますが(汗)、年末の記事を書こうと思います。

 毎年書いている気がしますが、まず景気の悪さについて触れなければなりません。一般的な美術品の相場は下がり、オークション会社の落札率・出来高ともかなり下降してきました。

 しかも、数年前は「日本の景気が悪い」という感じで、海外の買いに支えられてきた美術品もあったのですが、今は世界同時不況の様相。さらに、円高のため海外で売っても円にすると目減りしてしまうケースが多々ありました。

 国内の売りも、先日久しぶりにネットオークションに出品したのですが、まあ惨憺たる結果でしたね…。コレクターの求める希少性の高い品物の他は、ほとんどが不落札。と言って、先程書いたようにオークション会社への出品も厳しい状態で「これまで扱ってきた品物を売るのが難しい」という1年だった気がします。

 ただ、だからと言って美術品が売れてないかというと、実はそうでもないんです。確かに景気の良いときに比べて売れ行きは悪いですし、「美術品の流通総額」というものを比べたら右肩下がりにはなっているのでしょう。

 しかし、大量に流通する古物や、ありきたりの「お宝」の値段が下がり続け、あるいは見向きされなくなっているのとは異なり、「プライマリー」、つまり「新品」の美術品は(作品によっては)取り合いになるくらい売れているのです。

「この時代、取り合いになるくらいの美術品?」。そう思われる方も多いでしょう。普段美術品を買われていて「そんな光景見たことないよ…」という方もいらっしゃると思います。しかし、美術品というのは「趣味のもの」。そして、愛好家・コレクターという人達は必ず存在していて、しかも熱烈です。

 古物と異なり、新作は発表される以前に誰の眼にも触れていませんし、当然ながら誰の手にも渡っていません。コレクション目的の方は、そういう品を競うように買うのです(勿論、デキの良い作品を選んで買うということですが)。これは、例えば伝統的な陶芸作品であるとか日本画・洋画の売買というより、若い作家が多く作品が数万、数十万円程度で買える現代美術の世界でよく見られる話なのですが、この時代にもこういった「需要の高い美術品」があることに注目するべきでしょう。

 現代美術は流れが早く、2、3年前は新人だった作家がアッと言う間に主役の一角に躍り出る…ということがある世界です。そして、そういった作家をギャラリーを巡りながら発掘し、競うように買う人が意外なほど大勢いるのに気づかされた1年でもありました。

 考えてみれば、気に入った作品を買うのが美術・骨董の世界。無機的な計算ではなく、「自分の眼と心を通して買う」という基本に立ち返ってみるのが、不況時には尚一層大切なことなのかもしれません(売る方も買う方も…)。

 急いで書いたのでまとまりのない文章となってしまいましたが、それでは皆さん良いお年を。

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コメント

落札価格も落ちていますが、最近では出品も減った気がします。さみしい限りです。

もっとも、オークションでは最後まで競り合うライバルは現われないに越したことはないのですが。

流行にとらわれず、気に入った良品を収集、鑑賞していきたいと思います。

来年も宜しくお願いします。

コメント有難うございます。

本文に「オークション会社への出品も厳しい状態で…」と書いておりますが、(普通の品では)出したところで大損です。出すに出せないといったところでしょうか?

私も、買う側の立場では競る相手がいなければ、あるいは安く買えればと考えることはあります。しかし、売りと買いは表裏一体。安く買おう、拾い物ばかり狙おう…と考える人ばかりになると、業界自体が萎んでしまうんですよね。美術業界のみの話ではありませんが。

以前はよく見かけた、値切らない方や若い業者を気持ちよく応援してくれる方も、今では減ってきた気がします。

去年の話になりますが、地元に関係する、幕末から明治にかけての貴重な資料をお持ちの方から相談を受けました。
個人的に、地元自治体で所有してもらったほうが良いと判断し紹介しましたが、担当者の知識の無さに呆れ、個人的に引き取り、保管させていただくことにしました。
詳しい内容も確認せず、予算が無いから寄付ならありがたいと言われた時には、引き取ってもらっても、何十年と倉庫でほったらかしにされるんだろうと思い悲しくなりました。
今後、地元の皆さんにどのような形かで紹介できないものかと思案中です。

shuttle様。コメントは確認していたのですが、返信が大幅に遅れましたことをお詫びいたします。

熱意を持って仕事をしている人、与えられた役割を与えられた裁量権の中で淡々とこなそうとする人、同じ「仕事をする人」でもいろいろあるものです。

自治体の担当者の中にも、熱意を持って仕事をしてくれる方はいるのでしょうが、皆が皆…というわけにいかないのは残念ながら仕方ないのかもしれませんね。

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