・モノに魅力がないと…その2

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近所にできたチェーンの大型リサイクルショップ。食器売り場のコーナーで、ある作家の作品を見つけました。

チェーンのリサイクルショップには1つ悪いところがあって、共箱が捨ててしまわれているケースが多いんです。恐らく「邪魔」ということなのでしょうが、ブランド品やプラモデルの箱は綺麗に残されているのに、美術品の箱は捨てられる…。

中には、大徳寺の書付があったであろう掛軸の箱が捨てられてしまっていたこともありました。大徳寺の僧による軸があったので店員に「箱はどこにありますか?」と聞いたら「処分しました」とのこと。値札に品名として僧侶の名前が書いてありましたが、タトウ(外箱)にあった名前を値札に書き写して共箱ごと捨ててしまったのでしょう。何とももったいないことです…。

話を戻し、食器売り場にある作品は、共箱が残っていました。小さめの鉢といった感じでしたが、作者は(故人ですが)名のある作家。ただ、ネームヴァリューに比してあまり人気がなく、ネットオークションなどでは比較的安く流通しています。それでも、共箱付きで1380円。自分で使う器として買ってもよかったのですが…。

とにかくモノがつまらないんです。デザインが渋すぎるというか昭和中期というか、レトロな雰囲気ならまだしも、ある程度の年齢になった私からしても「お爺さんの家」にある感じというか…。悪い作品ではないのですが、これでは楽しんで使えません。

全く趣味に合わずその品はスルーしましたが「有名作家&共箱。1380円ならそのうち誰かが買うだろう」と考えていました。作者を知っていれば、名前で買う人はいるものです。また、渋すぎるとは言えこの作品を良いと思う人がいるかもしれません。

が、翌月にそのショップへ行ったときも鉢は売れ残っていました。その次も、その次も…。数か月後、その作品を見なくなったので「おお、ようやく売れた」となぜかホッとしたような感じになったのですが、次の瞬間、山積みにされた鉢の中にその作品が紛れているのを見つけたのです。

そう、その鉢は箱を捨てられ値段を下げられてしまったのでした。確か780円だったでしょうか? 箱があれば読みやすい箱書で(陶芸家に詳しい人なら)すぐ作家がわかると思うのですが、箱を捨てられ本体の銘のみではもう誰の作か分らない人が多いでしょう。

こうして、共箱付の陶芸作品は量産品の鉢と同じ扱いになってしまったのですが、いくら名のある陶芸家の作品でもモノに魅力がないと買い手はいないんだな…と改めて痛感させられた出来事でした。「そんなの当たり前だろ」と思っても、私も美術商になりたての頃、よく名前でモノを選んでしまったり、デキの良くないモノを相場を踏み外して買ってしまったりしたものです。

今回は極端に安い価格での話でしたが、モノを買う時・仕入れる時は、名前や価格に惑わされず「モノの魅力」で考えるべきだな…と、改めて感じた出来事でした。

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