・オランダの陶器

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 和骨董を扱う古美術商は、どうもオランダの陶器が好きなようです。勿論、和骨董の古美術商だけがというわけではないのでしょうが、他の西洋陶器に見向きもしない業者がよく買ったりしているのです…。

 理由はいくつかあると思いますが、オランダという国自体が日本の和骨董と少なからず関わっている点が挙げられるでしょう。「阿蘭陀(オランダ)写」とか「阿蘭陀図」などという柄や箱書の物が出てきますし、東インド会社~伊万里の「VOC皿」などもよく知られています。ブルーの染付作品が多いのも親近感のあるところ。しかし、もう一つの理由は、そのデキというか味のあるところに和骨董業者が惹かれるからだと思うのです。

 オランダの陶器は軟陶、つまり焼きの軟らかい物が多く表面に貫入(釉薬のヒビ)がたくさん入っていたり、あるいは表面の釉が剥がれていたりすることがあります。また、絵付けが滲んでいたり、悪く言えば全体的に野暮だったりするのですが、こういう物ほど味良く見えるものです。これが、マイセンのようにある程度カチッと焼けて、造形や絵付けも洗練されたものになってしまうと、価値基準や嗜好も別なものになるということなのでしょう。

 以前、ある古美術の交換会で湯呑のようなオランダ製のカップが10客ほど出ていました。軟陶に印判のようなプリント。それほど古くもないし、作られたばかりでもなさそうという物でしたが、大して良い品には見えませんでした。が、古い木箱がつけられていたのは古美術商の市場を意識してでしょう。木箱自体大した物でもなく余ったものから合わせられたのでしょうが、商品を売る「雰囲気」は作れるものです。 とは言え、下手をするとリサイクルショップに置いてあるような品。気にもせずに競りを見ていると…。

 高額というわけではありませんが、そのカップは予想以上の価格で売れました。競っているのは和骨董の業者数名です。私の横にいた西洋系の業者は「何であんなもん売れるの??」と言っていましたが、競っている方は「阿蘭陀の染付(印判)陶器」という、和骨董業者ならではの価値観を持って競っていたということなのでしょう。

 あるジャンルからすれば大したことのない品でも、視点を変えれば別の価値感が潜んでいるのかも知れません。また、それを知っていてその差額で利益を出すのも「商売」というものなのでしょう。

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