・世代によるギャップ

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 最近、交換会などで古美術商同士の「世代による評価のギャップ」や「趣向の違い」を目にすることがあります。

 私も古美術商としてはまだ若い方なのですが(多分…)、私やその下の世代と50~60代以上の世代では明らかに趣向が違ってきています。ある品を競っているのは若い人、ある品を競っているのはベテラン業者という感じです。いつの時代でもこういったギャップは存在するのかもしれませんが、どれも流通する美術品。年齢を問わず全員がプロの古美術商であることを考えると、こうも世代によって声の掛かり方が偏るのは不思議なことなのかもしれません。

 また、私がこの世界に入る前は値段の付いていた古陶磁器や古道具が、現在では(景気その他を考慮しても)かなりの安値になってきているという話も耳にします。以前、ある東南アジア系の古い焼物が市場に出た際、本物でソコソコの良品でしたが全く買う人がいませんでした。この陶器はいわゆる「骨董品」としてはお馴染みの品なのですが、最近は扱おうという人が少ないのでしょう。会主(交換会の責任者でオークショニア)も「おーい骨董屋さん、誰か買ってよ~」と言っていました。この「骨董屋さん」という意味がわかりますでしょうか? ここは古美術商による交換会。全員「骨董屋」なのですが、昔の業者がよく扱っていた品、やや商品としては流行遅れな品ということから、少しレトロな感じのする「骨董屋さん」という呼称を揶揄として使ったのです。

 ちなみに、その商品は売れませんでしたが、終了後私が数千円程度で出品者から買いました。値段の安さもありましたが、古陶磁器としての魅力を備えていましたし、何より参考品としてじっくり見てみたかったのです。売っても安いでしょうが、気に入っているので今でも手元に置いています。

 話を戻して、例えば矢立(筆と墨が入る、昔の携帯用筆記道具入れ)とか、煙草(煙管)入れとか、こういった昔ながらの骨董品へ積極的に声を出している若い美術商をあまり見掛けないように思えます(単にそう思っているだけかもしれませんが…)。また、こういった商品自体やや現代人の趣味から外れ、ベテラン美術商同士で売買される品になってしまったようにも思えます。 

 表現は変ですが、これが昔からある骨董品と言っても例えば小さな工芸品で「ガチャポン」や「食玩」に通じる魅力があるとも思える(?)「根付」とか、世代を超えて本能的に訴えかけるものを持つ「刀剣・刀装具」といった品なら、骨董に興味のない若い方でも今後買い求めようとする方はいるのでしょう。しかし、例えば矢立であるとか煙草入れであるとか、あるいは一部の古民芸品や掛軸といった品を、現在の若い方が年齢を重ねた際にコレクションの対象とするのか興味があるところです。何が流行するかわからないですし、矢立にしても煙草入れにしても優れた品~コレクションの対象としては十分面白い物ですが、今後の少子・高齢化社会を考慮すれば、値段の付く品、付かない品がますます両極端になっていく可能性もあるのではと考えています。

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