・深夜の攻防戦 その2

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 前回の続きです。夜のノンビリムードから一転、何気ないメールから突然の商談となってしまいました。

 私がメールした同業・Aさんとしばらくメールでやり取りしましたが、さすがに電話での商談に変わりました。メールが便利と言っても、やはり言葉を交わした方が早いからです。どうやら、Aさんの向こう側いるBさんも古美術商のようで、私~Aさん~Bさんという交渉になっているようでした。

 Bさんが古美術商ということは、同業にしてもお客さんにしてもその後ろにまだ売るべき人がいることになります。私も別の古美術商から買っているわけですから、最後に品を買われる方まで思いのほか多くの業者が関わっていることがおわかりいただけるでしょう。こう書くと、いかにも品が高くなっていくようですが、最終的に売られる価格は相場になるのだから不思議(笑)。ともかく、その晩は私とA、Bさんの交渉がまとまればOKという感じでした。

 実は、Aさんから出された最初の値段提示で、経費を考えても私の買値を上回る提示が出されてはいたのです。ここで売っても利益は出ましたが、私は売りませんでした。欲張りなようですが、今回取引する商品は私が特に安く「拾ってきた」物で、相場よりずっと下で買っていました。二次流通の相場が100万ある物を、95万とか90万で仕入れることは古美術ならできるでしょう。皆そうやって商売しています。が、これが80万、70万…と下がれば下がるほど買うことが難しくなります。普通に考えて、100万円の価値がある物をわざわざ安く売ってくれる人はいないからです。

 しかし、純金や株券の取引と違い、美術・骨董品の売買には例外が多々あります。以前も書きましたが、プロである美術商と取引しても畑違いの品で安く買えたり、あるいは極端な例としてはリサイクルショップで良品を安く拾えたり…。美術商の鑑定眼と言えば品物の真贋を見抜く事のみ注目されがちですが、利益を出せる品かどうか見抜く眼も重要となります。いくら本物の名品と看破しても、相場を踏み外して買ったら商売になりません。と同時に、自分の知識が無いものは、安く売ってしまったりするものなのです。

 話がそれましたが、当然私は商品を相場近くで売りたいと思い最初の提示を断りました。利益は出せても、提示額は通常の取引価格よりずっと下だったからです。しかし、仲介してくれているAさんや、その先にいるBさんの利益も考えなければなりません。Aさんと交渉~電話を切ってAさんがBさんと話した後、また電話をかけてくる…。これが何度か続きました。

 なんだかんだで、夜の2時過ぎになってきたでしょうか? ようやく落としどころが見えてきました。結果、私が商品を買った際「このくらいで売れればいいな」と思った価格より1割チョイ程度下げた価格で売ることに決定。当初から高い値段は考えていなかったので、相場からすれば割安だったでしょう。時間を掛けて上手く売れば、その商品はもっと高く売れたのかもしれません。しかし、買った品がすぐ売れてくれるのが一番。置いておくだけでも経費や手間は掛かるものです。Aさんにも些少ながら手数料を落とせるよう考えながら決めましたし、誰だかわからないその先にいるBさんも「よろしくお伝え下さい」とのこと。こうして深夜の取引は終わりました。今度はAさんから品を出してもらう時もあることでしょう。

 取引が決まってホッとはしましたが、同時に私の頭にはちょっとだけ暗雲が立ち込めました。その品は梱包が非常に厄介な美術品だったのです。しかし、なるべく早く送ってくれとの話。どうやらスケジュールの都合で、当日仕事へ出かける前に送るしかなさそうです…。深夜、眠い目をこすりつつ目覚ましを5時半にセットして布団にもぐったのでした。

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