・これだからやめられない その1

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 古美術商の会での話です。あるガラクタの山が出ていました。が、その中に1点だけ欲しい品があったのです。

 私が欲しかった品。それは、ある作家の花瓶が裸になってしまった(箱が無くなってしまった)物でした。まだそれほど知られていませんが、一部コレクター間で注目されている陶芸家の品だったのです。出来も良く、箱があったらこの1点で扱われたかもしれません。しかし、箱の無い陶芸家の作品は格安となってしまいますし、そもそも箱(箱書)がないと作者の判別が付かない場合もあります。競りかけられる際、売り手側の古美術商も唯一マトモな品であるその花瓶をアピールすることはありませんでした。

 私はその1点だけ欲しかったのですが、冒頭に書いた通りこの品は「一山いくら」で売られます。しかも、他の商品は箱も何もないコップのセットや量産品の花瓶といった物ばかり。言い方は悪いですが言わば「ゴミの山」でした。3盆分あって量も結構なものです。以前書きましたが、不用な物が付くと商品の値段はかえって下がってしまいます。梱包したり運ぶのに手間がかかりますし、品物というのは保管にも場所を取ります。売買の手間をかけ、売れたところでほんの少しの利益。「労多くして功少なし」どころか、経費・手間を考えたらマイナスになりかねません。

 その山の売り番がきました。目当ての1点だけで3~4千円くらいなら欲しいのですが…。会主「はい、この一山が千円、千円…」「2千円!」。その市場ではあまり見かけないオジサンが声を出しました。他に競りの声も上がらずアッサリ落札。私は一緒に売られたいらない商品の多さに、結局声を出しませんでした。しかし、目当ての品を買えなかったというのはよくあること。ちょっと残念ではありますが、もの凄く欲しい物、儲かる物というわけではないですし、まあ仕方ないかなと思いました。

 交換会が終わると、各々帰り支度を始めます。落札された美術・骨董品は買主ごとに別の場所に集められているのですが、見ると私が買った品の隣に例の一山を含めた品が。どうやら、これを買ったオジサンの荷物が偶然私の荷物の隣にまとめられていたようでした。お互い荷造りをしていましたが、私は挨拶しながらちょっと交渉してみることにしたのです。
※その2に続きます

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