・ある一山の話 その4

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 山の残りである「鉢」をネットオークション出品したものの、正直全く期待はしていませんでした。

 出品して間もなく「入札1」。私は「おっ、売れた」と思いました。何とも平凡な感想ですが、私の知識になかった陶芸家の品。いくら出来が良いと言っても、開始直後に入札が来るとは思っていなかったのです。ともかく、既に利益が出た山の残りですし、スタート価格の3000円でも「売れてくれれば御の字」くらいに考えていました。

 しかし時間が経つにつれ、その鉢は5千円になり、1万円になり、ついに2万円を超えました。こちらとしては嬉しい限りですが、頭の中は「?」です。しかも、競っているのは私から何度か商品を買ってくれたコレクターのお二方。目利きのコレクター同士が競っていることで、私はその作品(作家)に需要があることを認識し始めました。品物そのものの良さはありますが、現代陶芸において「作者は知らないが単に出来の良い鉢」が古物(二次流通品)として数万円もするはずはありません。恥ずかしながら、私の知識不足だったのです。 

 ただ、お客さんやコレクターから教わるケースは珍しくありません。今回のような現代陶芸品で言えば、才能ある若手作家や人気作家などの話は、お客さん側から伝わってくることが多いのです。古美術商は基本的に二次流通している品を扱っていますし、正直、積極的に展覧会へ足を運ぶ人も少ないでしょう。あくまで「商品」としてのみ作品を見る場合もあります。

 逆に、陶芸ファンは興味を持って積極的に展覧会へ足を運びますし、作品の良し悪しを論じ合っている方もいます。ネットや雑誌その他で最新の情報を手にしていますし、むしろ我々よりも作者の力量や人気・相場といった情報を早くキャッチしているといえるでしょう。現代陶芸のみならず、美術・骨董品の相場や人気(流行)、あるいは物の動きといった「生きた情報」は、書物や美術館から得ることができません。こういった情報あるいは知識・経験は、人と接し物を売買することで初めて得られるものなのです。

 話を戻して、結局コレクター2人が競った鉢は、3万円を少し超える価格で落札されました。「棚から牡丹餅」ではありませんが、まさに望外の落札価格。落札者からのメールによると、この陶芸家は作品が少なくあまり流通していないものの、力量があって人気があると話。言わば「隠れた人気作家」だったのです。ちなみに、ネットオークションはこういった「隠れた人気作家」の何人かを私に教えてくれました。「美術商間ではほとんど知られていないが、コレクター間で評価されている作家」。このギャップを利用し、ネットオークションをやっていた頃はちょっとした「小遣い稼ぎ」をしていたものです。

 不勉強は恥ずべきところですが、予想外の売り上げがそんなことを忘れさせていました。もし手っ取り早く処分しようと交換会で売っていたら、やはり山にされ数千円というところだったでしょう(その後、知り合いの美術商数人にこの作家の名前を聞いても、知っている人はいませんでした)。一般、美術商の区別なく多くの人が参加し、競りが発生するネットオークションに出したことが幸いしたのです。

 これで、2万円で買った山は8万円になりました。金額そのものは大したことないでしょうが、利益率を考えれば文句なしです。が、さすがに山の残り物で高く競ってくれそうな美術品はもう無いようでした。それでも鉢で味を占めた私は、何点か出してみることにしたのです。もしかしたらまた競りが発生するかもしれませんし、最終的にこの山が合計いくらになるのかという興味もあります。

 しかし、出品した私を待ち構えていたのは、思いもよらぬ「珍事」でした…。   
※この話の「その5」は『裏美術売買』に掲載します。

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