・粗品は××× その3

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 前回の続きです。オークションからの帰り道、私はもらった粗品が何か考えていました。

 何の根拠もないのですが、最初にパッ思い浮かんだのは「目覚まし時計」です。重さもソコソコありますし、梱包すれば大きさもそのくらい。ただ、美術品を扱うオークションに関係する品だとすれば、ちょっと外れています。勿論、粗品ですから関係ない品でもおかしくはないのですが、機械の類なら安物でもボール箱くらいには入っているでしょう。袋の口がテープで留めてあり隙間からしか見えませんが、中身は箱ではなく何かを直接包んだような形なのです。

 次に、「陶器ではないか?」と考えました。このオークションでは美術・骨董品の他に生活雑貨や量産品の陶器もよく競りにかけられていたのですが、粗品用のティーポットや中型花瓶ならサイズ・重量ともピッタリです。形も多少いびつですし、個々の箱が無くて梱包~プチプチの上から包装紙にくるんだとすれば見た目もこんなものでしょう。粗品として、オークションとの一応の関連性もあります。と、あれこれ考えるうち、アッという間に駅へ着いてしまいました…。   

 ラッシュ前とは言え、夕方の電車は少々混雑しています。私もイスに座れず扉近くで立つことに。しかし、相変わらず頭の中では粗品の推理をしていました。「梱包に使うし、ガムテープ2個かな?」「サッカーボールの小さいやつかな?」「黒ひげ危機一髪ゲームかな…?」。私の予想は冗談交じりになってきて、だんだん「粗品」というにはハズレた物を想像していったのです。それでも、内心では「何らかの陶器」という結論に達していました。

 そもそも粗品の中身など、どうでも良い話ではあるのでしょう。すぐに開けずとも、家に帰ってから見ればよいだけのことです。しかし、あれこれ考えているうち、どうにも紙袋の中が気になってきました。手持ちの荷物もあるし、人の多い車内で立ちながらガサゴソするのも気は引けるのですが…。私は、とうとう我慢できずに車内で袋を開けることにしたのです。オークションで落札した荷物を床に置き、紙袋の口に貼ってあるテープを取り、バリバリと包装紙を開くと…。

 中身は「レタス1玉」でした。あまりに予想外だったため一瞬目が点になりましたが、次の瞬間からジワジワこみ上げてくる笑いを抑えるのに必死です。電車内で1人笑うわけにもいきません。いや、もしこれがスーパーとか八百屋さんで「先着100名様にレタスをプレゼント」というのならわかります。が、美術品を扱うオークションのリニューアル・オープンでなぜ生野菜…。この取り合わせは、不自然というより「シュールなネタ」そのものでした。 

 ちなみにこのオークション、1年ほど前に書いた記事「猛烈な競り合い」の舞台になった所です。が、リニューアル後しばらくして倒産してしまいました。実は、大手の陰に隠れ全く目立たず消えていったオークション、開催されなくなってしまった小さなオークションというのは意外なほど多いのです。こういうオークションほど商品を安く買えたり、軽食等のサービスがあったりしたのですが…。ただ、傍から見ても経営が成り立っていないのは明らかでした。

 今回の記事、一応メインの話は「粗品」です。しかし、わずかながらもオークションや競りの側面をご紹介できたかもしれません。機会があれば、またオークションに関するエピソードやニュースなどをご紹介したいと思っています。

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コメント

 何も言わずに梱包した生ものを持ち帰らせる会社・・。あまりに奇想天外で不可思議なお土産に、目が点になりました。

 中途半端に「ルービックキューブ」だったほうが、納得いきますね。笑

 そうですねぇ。どういう経緯があったのかは知りませんが、この粗品を選んだ段階でオークション会社の命運も決まっていたような気がします、と書いたら大袈裟でしょうか…。

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