・美術品の鮮度 その1

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 美術・骨董品には、いろいろな意味で「鮮度」というものがあるようです。

 近年、古美術商は勿論、骨董ファンの方からも「うぶい(初い)」という言葉が聞かれるようになりました。これは主に、蔵や民家に保管されたままで、ほとんど人目に触れていない(二次流通していない)品を形容する言葉です(時代ある品の「状態が良い」という意味で使われる場合もあります)。こうした「うぶい品」は何より業者に好まれるのですが、買出しをされている方が旧家などから仕入れた品を交換会でたくさん売る~それが前もってわかっている場合、案内のハガキに「初荷(うぶに)有り!」と書かれる場合もあるほどです。その知らせを見て、遠方の古美術商や普段顔を出さない方も来場するのですから、「うぶい品」がいかに魅力を持っているのかおわかりいただけるでしょう。

 なぜ「うぶい品」が評価されるのか? 単純に、ほとんど二次流通しておらず保存状態が良いということも挙げられます。しかし、以前書いた「人工衛星」という記事をご覧いただければ、何となくその理由がお察しいただけるかもしれません。多少意味合いは違うのですが、少なくとも人目に晒されていない品が人工衛星と反対の位置にあるのは確かなこと。蔵や民家から出たうぶい品が、その後人工衛星と化す可能性もなくはないでしょう。ただ、その時点で鮮度の高さを兼ね備えている~売るのに有利な商品であるのは間違いないのです。 

 逆に、古美術商は手持ちの在庫が人目に晒されることを、「目垢(めあか)が付く」と言って極端に嫌う場合があります。ずいぶん以前、私の知り合いで某老舗古美術商の若主人が骨董ショーに出店していたのですが、取材していたテレビ局が商品である高額の掛け軸を撮影しようとした際、慌てて断っていたことがありました。何かと色眼鏡で見られるこの業界。TV局の人は「何か見られちゃまずいのか?」とか、「盗品なんじゃないか?」と思ったかもしれません。また、ちょっと頭の回る人なら撮影用ライトで作品が変色するのを防いだ、と考えたことでしょう。しかし、理由は違います。この若主人は取材陣が去った後、爽やかな笑顔で私に言いました。「目垢が付いたら、たまらないですからね」。

 これは「おまじない」でも「ゲン担ぎ」でも何でもありません。確かに、美術品は露出することで評価が上がる場合~展覧会出品歴や美術館展示歴、図録掲載等により価値が出ることもよくあります。皆さんが自慢の逸品を人に見せる際、権威ある美術館の図録や美術書にそれが掲載されていれば、まず一緒に見せることでしょう。が、「あー、あそこで売ってたやつね」とか、「これ、どこかで見たな」とか「これは確か○○円だったね」などと言われるのはちょっと嫌なもの。「箔が付く」のと「目垢が付く」のでは大違いなのです。買いやすい価格の品や普段使いの品ならともかく、ある程度レベルの高い美術品には多少なりとも「神秘性」が必要ということなのかもしれません。 

 ただ、既に何度か流通している品や手頃な価格の美術品にまるっきり「鮮度」がないかというと、どうやらそうでもないのです。
※その2に続きます

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