・人工衛星

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 古美術商になってしばらくした頃の話です。交換会で近くにいた人が「あ、人工衛星だ」と話しながらある骨董品を手に取っていました。

「人工衛星??」。 確かに、競りの場には何でも出てきたりしますが、人工衛星というのはよくわかりません。一瞬、模型か何かとも思いましたが…。

 近くにいる古美術商が手に取っていたのは、ある雰囲気の良い置物でした。時代もありそうですし、何よりパッと見の感じが良いのです。いかにも玄人受けしそうな感じで、これぞ「骨董」という品。それがなぜ「人工衛星」なのか…。横で話を聞いていると、どうやらある程度の期間をおいて、あちこちの交換会をグルグル回っている商品だというのです。骨董品が競りに掛けられるときは、お盆に載せられて会場を1周~各々が品定めをする場合が多いのですが、そういった点からも「人工衛星」と表現していたのでしょう。私もこういう品には何度か遭遇しています。

 骨董品というのは、基本的に1点物です。いくつか同型の物が作られたとしても、量産の難しかった古い物なら微妙に形が違ってきますし、絵付や細工が施されている物ならそれこそ1つ1つ雰囲気が違います。更に、時代による変化やキズが加わるので、状態まで含めて同じ物というのはほとんど考えられません。古い雰囲気を再現して現在作っている工芸品がいくつか出回ったということも考えられますが、星の数ほどある骨董品の中、「人工衛星」はどう見ても記憶にある商品そのものなのです。

 古美術商はこういった経験をよくしていると思います。自分が扱った商品を数年後見かけることもありますし、ネットオークションに出されているのも見たことがあります。ただし、交換会をグルグル回り続ける骨董品というのは、そういった物とは違う「ある特徴」を持っているのです。

「人工衛星」が持っている特徴。それは、先にも書きましたが「玄人好みの品」ということです。古美術商や骨董好きがパッと見て「味の良い物だなぁ」「雰囲気の良い品だなぁ」と思えることが一つの条件。しかし、こういった品の中には当然「万人受けしない」という物も含まれています。つまり、業者が「味がある」「渋い」と思い買ったものの、なかなか一般の方に売れずにまた市場を回っている、あるいは買う人が最初から「プロ向けの品」と考え、業者を狙ってある会から仕入れて別の会に出しているというのが本当のところでしょう。プロが評価する品だけに、人工衛星はある程度まともな金額で落札~結局は古美術商同士が売買しあうのです。

 そしてもう一つの特徴。これは私見ですが、その物が「一流の骨董品としては足りない」ということです。先程から「味が良い」「玄人受けする」と書いていますが、不思議なもので一見して良いと思っても飽きる品、いつまで経っても飽きのこない品というのがあります。3日で飽きてしまったとか1年とか、物や人によって期間の違いはありますが、人工衛星となってしまう品は玄人受けする良品であっても、いつまでも手元に置いておきたいという気にならない物のようです。これが全く、あるいは相当の期間飽きのこない物なら、恐らく古美術商か一般骨董マニアの手元に置かれ、こうもグルグル回らないことでしょう。

 売買される全ての骨董品がそうなのかもしれませんが、特にこの「人工衛星」は古美術商間を流通する「貨幣」のような存在なのかもしれません。

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