・2005年の美術売買

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 今年も残りわずかとなりました。『美術売買』をご覧いただきました皆様には、心より御礼申し上げます。

 さて、今年の動きを振り返りつつ、2005年最後の記事を掲載したいと思います。と言っても大した内容ではありませんが、宜しければお付き合い下さい。

 まず、バブル崩壊~その後の停滞から景気が上向きとなり、企業による美術品購入が本格的となってきたようです。しばらく前からこの傾向はあったのですが、大手オークションに出される「名品」には、今まで以上に企業関係の入札者が増えるかもしれません。

 その一般参加型オークションの動きとしては、新しく出来たオークション会社・移転して装いも新たにスタートしたオークション会社が東京に集中し、乱立の時代となってきました。オークションにより得意とする品目・価格帯等で色分けはされますが、これまで以上に厳しい競争が繰り広げられていくことでしょう。

 また、これだけ多く一般の方が入場できるオークション、あるいは骨董市が行われている現状で(ネットオークションも盛んに行われている中で)「古美術商」と「一般」の差~端的に言えば「業者価格」と「一般価格」の差が、ますます無くなってくるものと思われます。誤解を恐れずに書けば、美術品の価格はこの業界が持つある種の「閉鎖性」~「古美術商の交換会」「業者間取引」「敷居の高い店頭での売買」といったものが支えてきた側面もありました。しかし、今や誰でも簡単に情報を得られ、ネットオークションで品物を売買できる時代。かつて、美術商やごく一部のコレクターのみが知っていた(利用していた)相場が消えつつあるのです。

 この「閉鎖性がもたらしてくれた恩恵」で食べていた業者は、例え景気が良くなっても苦戦を強いられるでしょう。その一方、美術品の売買はある意味「人を買われている」側面もあります。「現代美術ならあの店」「あそこに置いてある焼物は良品が多い」「あそこのご主人は知識があって丁寧に説明してくれるよ」…。顔の見えない相手と無言の売買が繰り返されるネットオークションとは別の「大きな付加価値」があるのです。私のような弱小美術商が書いても説得力はありませんが、ネットオークションに品物が溢れかえっている今、品揃えにも会話にも特色のない店~つまり「付加価値の得られない店」は、淘汰されていくでしょう。ネットで淡々と売るならともかく、その逆にある「有機的なもの」が美術商の価値~延いては商品の価格を維持させるのかもしれません。

 先程も書きましたが、美術業界が持つ閉鎖性とは実際の売買のみならず、「情報」に関する閉鎖性でもありました。しかし、多くの方がパソコンを持ち、ネット文化がある程度成熟した今日、情報は氾濫し誰でも簡単に調べられるようになっています。ただ、そこにある情報は「誰もが調べられる情報」である事を忘れてはならないでしょう。人間、本当に得する情報・儲かる情報があれば他人になど教えません。あるいは、他人の話を聞いて始めて知る「疑問」や「知識」もあるはず。ネット上に落ちている公開された情報を集めるのも大事ですが、極めて有益な情報は最後の最後に「人」からもたらされるのです。ネットは十分活用し、人とのつながりで真に価値ある情報を得る(あるいは満足行く取引をする)…。美術商にしてもコレクターにしても、この2つバランスが重要となりそうです。     

 限りなく続くネットオークションに何となく「飽和状態」「食傷気味」といった印象を受ける一方、一般参加型オークション会社は次々オープンしています。景気は上向きのようですが、日本の人口は減り、「団塊の世代」の多数が定年間近となるなど、06年以降は良くも悪くも人・物・お金にかなり動きのある年になりそうです。売るにしても買うにしても、チャンスは多くなるかもしれません。 

 当初考えていた記事と少し方向がズレてしまいましたが(笑)、ともかく来年も当サイトをよろしくお願い申し上げます。それでは皆様、良いお年を。

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コメント

 あけましておめでとうございます。

 私が骨董に興味を持ち始めてまだ二年弱ですが、管理人様が書かれているように、この短い期間でも個人の買い手の選択肢が増えているような気がします。買い手の一人としてはうれしい状況ですが、その一方で、明らかに買い手を欺こうとする売り手も増えているような気がします。そういう意味では人を含めて選択眼は時代が変わろうと必ずもたなければいけないのかなとも思います。

 今年もコラム楽しみにしております。よろしくお願いします。

 美術・骨董品の売買は、人と物との出会いであると共に、人と人との出会いでもありました。本来この部分が重要なのですが、便利な世の中になるにしたがい会話もなくなり、売る側も買う側も手間やお金を掛けなくなってきているのです。

 私が書くのも失礼ですが、この時代にあって「別けて考える」というのは良いお考えだと思います。どちらか一方に偏ってしまっては、上手く行きません。 当ブログでは、「売買の話」を中心に書いているのでやや無機的な印象もあると思いますが、私も売り手の1人として買い手に喜んでもらえる品や話題を提供していかなければと考えています。

 新年一番のコメント有難うございました。今年もよろしくお願い申し上げます。

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