・着物~布の売買 その2

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 西洋アンティークで扱われる古布や織物、あるいは和骨董における古布も「美術品」には違いないのでしょう。

 ただ、この手の品には美術品としての魅力は勿論、それ以外の「特殊な魅力」も備わっている気がするのです。

 それは繊維や布~あるいは織物が、人間生活の基本的な部分に根差した品だからでしょう。人類の黎明期、衣服というのは単に毛皮を纏うだけだったかも知れません。が、記録にない太古の昔から人々は麻を使い、綿を植え、あるいは羊を飼い繊維~布や織物を得てきました。勿論、絵画や陶器らしい物もあったのでしょうが、衣服や布・織物というのは様々な意味で「美術品以前にある物」ということなのかもしれません。 

 以前何かの展覧会に行った際、西洋の非常に古い、薄汚れてボロボロになった織物をずっと見続けている女性がいました。考古学的・歴史的な価値はともかく、私にはその品の魅力がイマイチ理解できません。が、いつまでも見つめている女性の姿を見たとき、私は美術・骨董品を眺め続ける人とは少し違う何か~上手く説明できませんが、布や織物が「本能に近いところで人を惹きつける物」ではないかとフト感じたのです。私には一瞬、展示品を眺め続ける女性が、当時の姿をして織物を織っている光景が見えるような気もしていました。 

 さて、「布」と言えば古美術ファンにはお馴染みの話かもしれませんが、昔の古美術商~買出し屋さんは、美術品がなさそうな古民家でも「ある物」を狙って訪れていました。何だかお分かりになりますでしょうか?

 それは「布団」です。昔の人が寝ていた古い布団。「そんなものに価値があるのか?」と思われるでしょうが、それがあるのです。買出し屋さんが狙っているのは、綿を包んでいる表面の「布」。確かに、昔の人が寝ていた布団ですから薄汚くなっていて、普通は触るのも嫌という感じなのでしょう。しかし、それが古い布なら「布のアンティーク」ということになります。布や織物の類はとても人気がある商品。古い布というのは、需要がある品なのです。

 着物の話に戻りますが、近年、美術品を扱うオークションでも久保田一竹(一竹辻が花)の着物や価値の高い着物がポチポチ扱われるようになりました(売れ行きも良いようです)。以前にも増して着物や浴衣を着ている方を見かける気がしますし、ファッションに知識0の私が単純に考えるほど「着物文化」というのは衰退していないのかもしれません。

 さすがに、私が着物を扱うことはないと思います。しかし、着物に興味がない私でも一竹辻が花の作品を見た際には感動がありました。扱い品目や好みに関わらず、優れた品を見ることは極めて有意義なことでしょう。案外、興味がないと思っている品から参考となる知識、ヒントを得るケースも多いものです。

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コメント

明けましておめでとうございます。
という挨拶はもう遅い気がしますが・・。
本年も色々と勉強させてください。どうぞよろしくお願い致します。

 新年一発目の記事(削除…)がコケてしまい、嫌な予感がいたしますが(笑)、今年もよろしくお願いいたします…。

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