・小さな埋蔵物 その1

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 先日、ある地方の市場に「変な物」が出ていました。それは何かと言いますと…。 

「金歯」です。歯に被せる、あの金歯。しかも歯1本分そのままの、何とも不気味な形状をしています…。

「気持ち悪りぃ。こんなもん売れるわけないだろ」と思って見ていたのですが、その金歯は商品としてちゃんと売買が成立しました(大した金額ではないですが)。

「うーむ。売る方もどうかと思うけど、買う人もいるんだなぁ」。と小声でつぶやくと、横にいたベテラン古美術商「いや、ごくたまにだけど、市場で見掛けたことあるよ」。どうやら、私自身取引を見たことがなかっただけで、稀に出てくる「商品」のようなのです。

 しかし、これを買ってどうするのでしょうか? 確かに「金」なのでしょうが、換金できるほどの量でもありません。細々と集めていつか「金塊」にするのか(笑)、それとも何かの材料に使うのか…。

 そんなことをボンヤリ考えていたところ、ベテラン古美術商が続けて私に言いました。「昔は、”火鉢を買ったら灰を吹け”なんて言ったもんだよ。灰の中に金歯が埋まってたなんて話も聞いたことあったっけ…」。

 今や一般住宅で使われないかもしれませんが、火鉢はもともと生活用品として身近にあった品。しかも「灰」という、埋めて隠すには手頃な素材が入っています。金歯が取れたら普通はそれを持って治療に行くのでしょうが、治療上使い回しできなかったり、総入れ歯になったり、取れたまま放っておく場合もあることでしょう。使い道のなくなった物ではあるけれど、一応金だから捨てるには惜しい。と言ってあまり綺麗な物でもないということで、お年寄りがとりあえず目の前にあった火鉢へ埋める光景も想像できます。大した物ではなくとも、ちょっとした物を隠す場所として火鉢は手頃だったのかもしれません。

 美術取引にふさわしくない「金歯」というグロテスクな物~ちょっとした不快の念を持って取引を見ていたのですが、私はいつしか日本家屋で火鉢のそばにいる老人の姿をフト思い浮かべていました。勿論、この金歯が火鉢から出たものかどうかはわかりませんが、自分としては微笑ましい小さなストーリーがあった方が面白いと感じたのです。

 すると、先程のベテラン古美術商がまたしてもポツリと私に話し掛けてきました。「火鉢を買ったら灰を吹け、○○を買ったら△☆×□…」。
※その2に続きます

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コメント

火鉢の中に…ですか。
かなり昔の親戚の話ですが、古い火鉢を始末しようとした所、灰の中から青磁の徳利が出て来たそうです。
確かに保管には最適ですね、何かの理由で灰の中に埋めたのでしょう。

 コメント有難うございます。

 青磁の徳利ですか。やっぱり、火鉢はちょっと
した隠し場所に最適だったのかもしれません。

調べてみれば、いろいろな話も掘り出せそうです…。

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