・小さな埋蔵物 その2

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 横にいたベテラン古美術商は、ポツリと私に言いました。

「火鉢を買ったら灰を吹け、箪笥(たんす)を買ったら引き出し開けろ」。

 箪笥を買ったら引き出し開けろ…。何とも普通の言葉で期待ハズレだったかもしれませんが、これは単に引き出しを開けて調べるというだけではありません。箪笥から引き出しを全て抜き取り、本体を含め隅々まで見ろということなのです。

 私は、この業者に聞いてみました。「箪笥から何か出てきたことありますか?」「あー、市場で買った箪笥から小判が2枚出てきたことあったよ。随分昔の話だけどね。俺はそれくらいだけど、他の業者でも拾い物をしたことある人はいるんじゃないかな…」。

 箪笥というのは、結構複雑な構造を持っています。しかも、最初から何かを隠すべく作られている場合や、持ち主が細工を施している場合もしばしば。引き出しを全部抜いて調べても、もしかしたら気付かれないケースがあるのかもしれません。

 話はちょっとズレますが、随分以前テレフォンショッピングで「からくり箪笥」というものを紹介していたことがあります。引き出しの奥にもう1つ引き出しがあったり、二重底になっていたり…。そこで紹介されていた「からくり箪笥」は、40~50cm四方くらいの物でした。見た目はそこそこ立派で、いかにも通帳とか印鑑が入っていそうな雰囲気。しかし、「これなら安心ですねぇ」と微笑むお姉さんを見ていた中学生くらいの私は「これごと持っていかれたら、どうするのかな??」という素朴な疑問が拭えませんでした(笑)。どうみても「ヨイショ」とばかり持っていかれそうなサイズだったのです。

 それはともかく、火鉢や箪笥は、かつてどの家庭にもあった身近な物~身近な隠し場所だったのでしょう。それが今や火鉢は勿論、どこの家にもあると思われた「箪笥」さえ少しずつ消えようとしています。服の収納は備え付けのクローゼットとなり、書類や物品の収納も機能的なラックやケースが使われるようになりました。

 金歯や古銭と言った小さな埋蔵物は、職人が作った箪笥や火鉢という「古物としてある程度価値の認められる物」に隠されていたからこそ助かったのかもしれません。もし、現代に作られた何の味もない収納ケースに隠されていたら、「廃棄物」として気付かれることなく処分されてしまうことでしょう。

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コメント

田舎の蔵にある箪笥、そういえば鍵が無くなり開かなくなっている引き出しや戸があります。
中に何も無いのは判っているんですが。

大切にされてきたが故に気づかれず…あるんでしょうね。

 コメント有難うございます。

 そう言えば、子供の頃おばあさんの家の引き出しを開けたところ、ちょっと古いお札が出てきたことがありました。

 本人も、忘れていたようですが…。
 

つい先日訪れた骨董屋さんで、
「初出しの箪笥の中に面白いものが入って云々」
という話を伺ったところです。
なるほど、何事も細かくチェックしようと思います。(笑)

実家や祖父母の家をいくら漁ってもたいしたものが出てくることはまずないですが、
自分の机の中からどこの国かわからないコインやどこでもらったのか記憶にない1ユーロ(最近なのに記憶が・・・)が出てきたくらいなので、
何か面白いものがあるといいなァ。
今度漁ってみます。(笑)

 コメント有難うございます。

 そうですねぇ。身近な人は勿論、自分自身の引き出しから意外な物が出てくることもありそうです。

 お宝は見つからなくとも、探し物くらいヒョコっと出てきそうですね。

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