・ある古美術商

スポンサードリンク


 先日自宅で休んでいた時、フトある先輩古美術商のことを思い出しました。

 この方は少し変わっていて「いたずら好き」というのでしょうか、「意地悪」というのでしょうか? ちょっと困るようなことを好んでやらせるのです…。

 ある古美術商の交換会で、当時駆け出しだった私は運営の手伝いをすることになりました。開始前の早い時間に会場入りして座布団や椅子を配置し、お盆やら何やらをセッティングします。業者が集まり始めると、今度は荷物搬入の手伝い…。手早く自分で運ぶ人、若造の私にも笑顔で挨拶してくる人、言葉一つなく何から何までこちらにやらせる人など、古美術商もいろいろな人がいるものです。      

 荷物運びで慌しく会場と入り口を往復していると、冒頭に書いた業者が私に声を掛けてきました。「○○君(←私)、悪いけどこれ持っていってくれない? 高い品物だから手持ちね…」と言うやいなや、いきなり大きな壺を抱え込ませるように持たされてしまったのです。実はその壺。美術商になりたての私でも高額とわかる品で、結果的には120万円くらいで売れていた記憶があります。そんなものを不安定な態勢のまま不意に持たされてしまったのですからたまりません。さらに悪いことに、その壺は蓋の部分と本体の部分、そして台座と3つに分かれる形状をしていました。一応プチプチに包まれてはいるのですが、単に一巻きしてあるだけで3つのパーツは固定されておらずグラグラ状態。内股の感じで恐る恐る、そして少しずつ会場へ向かった記憶があります…。   

 私は陶器をよく扱っていて、実際商品が破損してしまったり、その一歩手前でセーフという経験も何度かしてはいます。しかし、今思い返してもこれくらい冷や汗を掻いた経験はありませんでした。

 私に壺を持たせたこの古美術商。ごくたまにではありますが、他にも「いたずら」というにはちょっと度が過ぎる経験を何度かさせられています。が、茶目っ気があるというか人間に魅力があるというか、人としてそれほど悪く思うことはありませんでした。食事をおごってもらったり、物を教えてもらったりといろいろお世話にもなったのです。 

 ただ、非常にプライドが高いというのでしょうか? 他の古美術商と喧嘩になったり揉め事を起こしたという話も、後々噂で伝わってきました。私は親子ほど歳が離れていたせいもあってトラブルになることはありませんでしたが、ともかく仕事が忙しくなるにつれ遠方にあるその会にも行かなくなり、この業者と顔をあわせる機会もほとんどなくなったのです。

 ずいぶん前の話ですから、この方もある程度のお歳でしょう。広いようで狭いこの世界、どこかでいつかは会うと思っていたのですが、もうかなり長い間ご無沙汰となっています。気になって他の古美術商にも尋ねてみたのですが、ここ数年売買の場に姿を見せていないとのことでした。

スポンサードリンク


« 東京 上野→秋葉原 その1 | 美術売買  TOPページへ | 骨董オークション »
次の記事を読まれる前に、是非コメントをお寄せ下さい。

『美術売買 骨董・コンテンポラリーを中心に』では、皆様からのコメントをお待ちしております。

 記事を読まれてのご感想は勿論、古美術品収集や現代美術にまつわる話、美術品売買のエピソードなどがありましたら是非ご投稿下さい。※コメントは承認制です。表示まで、お時間がかかる場合がございます


Copyright(C) 美術売買~骨董・コンテンポラリーを中心に allrights reserved.