・続 競りの妙 その1

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 オークションにおける競り。このページをご覧になっている美術・骨董好きの皆様は、参加したことがありますでしょうか? ネットオークションで取引したことはあっても、会場でパドルを挙げたり声を出す実際の競りとなるとまだという方も多いと思います。

 決められた価格での買い物に慣れていると、競りで値を付ける買い方は珍しいように感じられるかもしれません。しかし、「欲しい人が欲しい価格で買う」という売買方法は、ある意味最も原始的な値段の決め方です。1点1点競りに掛けられるオークションの場合、その結果は思いがけないことになることもありますが、基本的には需要があれば高くなる~なければ安く落ちるのですから、市場原理がわかりやすく働くシンプルな取引方法と言えるのでしょう。

 競りは業種や土地柄でいろいろな方式があるようですが、大抵の場合は参加者同士競り合って最も高い値段を付けた人が落札することになります。ただ、そう簡単に型通りいかないのが商売というもの。数多く競りに参加していると、ちょっと面白い場面に遭遇することもあるのです。
 
 美術・骨董品を扱う某オークションハウスに来場していたときのこと。ある作家の茶碗が出品されており、その競り番がやってきました。作者は通常の陶芸家とちょっと異なり、「知る人ぞ知る」という表現が当てはまるでしょうか? 作風に強い特徴があり、一部で高い評価はあるものの品物自体それほど多く流通していないという、少し変わったポジションにいる陶芸家でした。

 こういった「異色の存在ながら、一定の評価はある」という作家の品は、意外と商売になります。例えばこの茶碗。茶道をされている方からすれば、ほとんど眼中に入らない品でしょう。中には「モノとして面白い」という方がいるかもしれませんが、どちらかと言えばお茶のための茶碗ではなく陶芸作品(表現手段)としての茶碗に作られていて、器としても茶道具としても少々扱いづらいからです。それに加え「知る人ぞ知る」→「多くの人は知らない」という作家ですから、一般的な美術ファンに需要が多い商品とも言えません。が、逆にそれを欲しいと思うごく少数派の人には熱心なコレクターや作家を評価している美術商が多く、目星さえつけておけば比較的簡単に買ってもらうことができるのです。作者の力量がなく「知られていない」「需要がない」というのとは違い、この作家は一部陶芸ファンや美術界からは一定の評価がされていました。

 さて、この茶碗の競りが始まったのですが…。
※その2に続きます。

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