・触らぬ神に祟りなし

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 刀剣や仏教美術などは、いわゆる骨董の代表的な取扱商品です。しかし、人の念というか、そういうものが入っている気がしてちょっと怖い一面もあります…。

 刀剣には、たまに「二ツ胴裁断」とか「三ツ胴切」と銘が入っているものがあります。これは何かというと、斬れ味を試すため死体(刑死による死体)を重ねてブッタ斬り、2人分の胴がスパッと斬れれば「二ツ胴」という言わば「斬れ味の証明」です。こういった銘の入っている刀は、わざわざ試し斬りするくらいですから良刀が多いのですが、最初に見たときはさすがにドキッとしました。また、以前黒い付着物がこびり付いた刀剣も見ましたが、今考えると血糊だったかも知れず、思い返すとゾッとします…。

 美術・骨董品と言ってもいろいろジャンルがありますが、中でも仏教美術は本当に奥が深い、素晴らしい世界を持っています。しかし、商品として扱われる仏像や観音様・経典等は信仰の対象ですし、幾人もの人、数え切れないほどの祈りが捧げられた物だけに商品として扱う際は少し畏れ多いような気もします。私は仏教美術をほとんど扱いませんし、一般的に言われる「霊的なもの」もそれほど信じない方なのですが、以前こんなことがありました。 

 ある誰でも知っている僧侶直筆の書を知り合いの業者が扱うことになり、その方は大変喜んでいました。そういった品には、贋作や真面目な写し(本物は少ないので、信仰の対象として写した物)も多いのですが、当の書は出所や品物そのものもしっかりして「直筆」として通る名品だったようです。処分を頼まれ手数料をいただく感じで預かったようですが、いざ売買するとなれば高額な商品。手数料だけでもかなりの金額が予想されます。意気込んでその品を預かり、商売しようとしたのですが…。 

 その方の話によると、品物を預かった日から体がだるくなり、高熱に見舞われたそうです。医者に行ってもなかなか治らず、商売も困難になってしばらく寝込んでしまいました。しかし、処分を頼まれた以上仕事をしなければなりません。何とか段取りをつけて知り合いの業者に預け、商売のアテを探してもらいつつしばらく休養する事にしたのですが、今度はそれを預かった業者が同じような体調不良になってしまいました。仕方なくまた別の業者に預けたのですが、今度は預けた品を積んだ車が事故! 幸い大事には至らなかったものの、ここまでくるとちょっと気味が悪くなります。

 結局、最初に預かった方が持ち主に返したところでこういう現象は収まったそうですが、現在では冗談交じりや揶揄的な表現で使われることも多い「触らぬ神に祟りなし」という言葉がフト思い浮かぶようなエピソードでした。この名僧の書が商売されたくなかったのか、長年存在した持ち主の元(あるいは、その土地)を離れたくなかったのか、それとも単なる偶然なのかはわかりません。が、あまりに「念」の強そうな物を扱うのは怖いなぁ、と小心者の私はつくづく思ったのでした…。

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