・骨董の価格 その2

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 私達が商品を仕入れる場合は交換会で買う、あるいは古美術商から直接買うことが多いのですが、供給の大元はと言えば一般個人から仕入れることでしょう。

 古美術商の中でも いわゆる「買い出し」をされている方達がいますが、地方に眠っていた骨董品が既に少なくなっていること、買出されている業者を通さずとも個人がネットオークション等で直接販売できるようになったことなどから苦戦が続いているようです。さらに、鑑定番組などが始まった影響で、「評価額」とのギャップを理解できない人と交渉が難しくなり、買いづらくなっているという話も以前に聞きました。

 私達は古美術商の会で品を仕入れてそれを店頭に並べる、または直接お客さんに売るケースも多いのですが、買出しされている方は基本的に同業相手の商売をします。つまり、私たちの仕入れ値より下で買って利益を得ねばなりません。売るにしても経費・手間は掛かりますし、些少ながら売り手数料もあります。買い出しの経費と売る際の経費を考え、その上で初めて働いた分の利益を乗せなければならないので、自ずと仕入金額もわかろうというものでしょう(勿論、買取り金額が安いとは言え、買われる側にも大きなメリットがあります。沢山の物を素早く一括して処分してくれること、すぐ現金化してくれること、自分で信用できる美術商を探したり、運搬したりする手間を省ける等々…)。

 もっとも、仕入額に関しては他の商売も同様ではあるのでしょう。以前、某ドライブインで定食を出すという話をテレビで放映していました。お膳に乗ったソコソコ豪華なもので、値段は1000円。なかなか見た目も美味しそうです。しかし、材料費はと言えば200円にも満たないと言っていました。その業界独自のルートや大量仕入等あるとは言え、専門外の商品で原価を聞くとその安さに少し驚くものです。 しかし、少し考えれば当然の仕入金額であることがわかるでしょう。1000円のうち、200円が材料費。これに人件費、光熱費がかかりますし、食器を洗うには洗剤も必要です。家賃があるかもしれませんし、調理器具や設備にもお金は掛かります。材料が悪くなったら廃棄しなければなりません。そして、その上にやっと商売としての利益が乗ります。そう考えて初めて、この原価が妥当なものと理解できるのです。

 物によって異なりますし具体的な数字はあくまで一例ですが、「評価額百万円」と言われた壺を買出しする人が「15万円で買い取ります」と言ったら、計算のできない人は怒ることでしょう。しかし、この15万円は真面目な提示価格です。評価百万円の壺と言っても実際の店頭価格はそれ以下、現実的には50万円前後の場合が多いと思います。お客さんなり同業に「マケてくれ」と言われて売る価格が35~45万円。ということは、店舗で売りたい業者は高くてもこの壺を25~30万円くらいで仕入れなければなりません。もし、買出しした人が25万円で業者に売った場合、利益は10万円。しかし、売り買いの経費もありますし、交換会で売ればさらに手数料もあります。

 それでも「10万も粗利が出たじゃないか」と思う方がいるかもしれませんが、それは「売れてくれたら」の話。利益を出して右から左に全て売れてくれればこんな楽な商売はないのですが、他業者とのお付き合いで安く売らざるを得なかったり、商品を回転して現金化しなければならないことから、損をして売る場合も随分と多いのです(これは美術商に限りません)。また、自分の目が甘かったせいとは言え、長い期間「不良債権」となってしまう古美術品もあります。さらに、買出しの際は利益の出ないようなゴミを同時に引き取るケースも多いですし、ハズレしかない場合も少なくありません。前述の例は、やや乱暴な計算で異論もあるでしょうが、あながち大きく外れたものでもないと思うのです。

 資産性や相場の上下等特殊な面もあるとはいえ、美術・骨董品も他の品~例えば食べ物なども「商品」。その売買で生活をしている人がいると考えれば、美術品としての表面的な「評価額」のみならず、実際に換金する際の価値が大まかながら見えてくることでしょう。
※その3へ続きます

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