・骨董の価格 その1

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 私はそれほど見ないのですが、友人から「テレビの鑑定番組、あの鑑定額ってどうなの?」と聞かれることがあります。

 骨董品の価格は古美術商や土地柄による違いこそあれ、ある程度きちんとした「相場」というものが存在します。一般の方には「骨董品の値段なんてあってないようなもの」と思われているようですが…。

 骨董の価格をわかりづらいと思わせている理由として、この手の商品ならではの「評価額」というものが挙げられるかもしれません。例えば、テレビにしろ直接お客さんに言うにしろ「この壺は百万円の価値があります」と鑑定したとしましょう。しかし、純金や小切手と違い、美術・骨董品はあくまで流通する「商品」です。本来、売却する際はこの評価額から何割か引いた額、あるいは半分かそれ以下の価格で売買されるのが普通。これは美術・骨董品に限らず商売の大原則ですし、そうでないと売買自体が成り立たちません。が、「美術品」としての特殊な価値観や資産性、消耗品と違って金銭的価値が上昇(変動)する場合もあることから、「美術・骨董品の評価額=物としての絶対的な金銭的価値」という錯覚も多少は持たれていると思うのです。

「古物の金銭的な評価額」を商売の場で古美術商同士が付けるのは簡単ですが、私にはこれをテレビで公にする難しさがわかります。例えば、現存する作家、あるいは故人で親族や関係者がいる作家の作品は、評価額の発表も冷や汗物でしょう。例えば、このサイトでも度々例に出す「名前は大きいが、人気はない作家」を考えればわかり易いと思います。作家がデパートや個展で発表した小さな花瓶が、発表価格10万円だったとしましょう。すると、まず「発表価格」として10万円という評価額が生まれます(この数字にしても、デパートやギャラリーの利益が乗っているわけですが…)。しかし、これがネットオークションや古美術商の会で競りにかけられれば、5千円前後がよいところ。名前はあっても人気のない作家というのはそういうものです。ここで「実際の取引額(持ち主が換金できる額)」として5千円という評価額が生まれます。

 さらに、これを古美術商が買って店頭で売る場合、人にもよりますが1万~2.5万くらいの額を付けることが多いでしょうか(価値観以外に、店舗の経費等もありますのでここはかなり差が出ます)。ここで「2次流通としての店頭価格」という評価額が生まれます。もし、この商品をテレビで「(発表価格の)10万円」と付ければ「なんて高いんだ」「こんなにするわけないだろ」「ネットで同じ作家の作品が5千円だ」と思えるでしょうし、実際の取引額「5千円」と付ければ「個展で10万したが、そんなに安いの?」、あるいは関係者、後援者から「○○先生の作品がそんなに安い訳はない」とクレームの一つもくるでしょう。古美術商からすれば5千円程度の価格で美術品を扱うのはよくあることですし、この価格でも十分価値のある品はあるのですが、どうやらテレビで5千円・1万円という鑑定額は、美術・骨董品として失笑が漏れる金額のようです。 

 結局、間を取ったような「古物としての店頭価格」が無難と言えば無難な評価額ですが、これでも発表価格・実際の取引価格の両者から離れているのですから違和感を持つ方も多いと思います。ちなみに、こういった値段の付け方は、他の商品でも基本的に同じこと。例えば食器棚が定価で売られる額、古物としてリサイクルショップに売る額、リサイクルショップが付ける額。そのそれぞれが違います。ただ先程も書いた通り、問題はこれが「財産」とみなされる場合もある美術・骨董品であることに尽きると思うのです。

 また、テレビの場合、ある程度のエンターテイメント性が求められるのは仕方のないところでしょう。芸能人が持ってきた作家の盃を、古美術店やネットオークションの価格「1万円」と付けるより、販売価格や作家の名声、デキの良さなど何らかの価値を見出して「15万円」と付けた方が拍手が起こるというものです。この「15万円」いう評価額は、決して間違った数字ではありません。ただし、鑑定した人が「美術品の価値としては15万円ある」と踏んだのであって、それを実際に「換金」しようとすると別な結果が待ち構えているのです。
※その2に続きます

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