・不謹慎ではあるものの

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 私の住んでいる関東地方では、夜半から雪となっています。どんな職種でも天候は何らかの関わり合いを持っていると思いますが、古美術商の世界で一番天候に左右されると言えば屋外で開催される骨董市でしょう。

 私は近年、こういった骨董市・骨董ショーに出店していません。準備や接客にかなりのエネルギーを使いますし、破損事故に合う機会も増えます。それに見合う売り上げがあれば良いのですが、ネットオークションの隆盛で「毎日が骨董市状態」の現在では、それも難しくなっているようです。個人的にコンテンポラリーを扱う機会が増え商品もやや合わなくなってきましたし、陶器その他の品でも比較的価格の安い物が売れる~そういった物を定期的に仕入るのは大変です。勿論、値段に関わらず面白い品もありますし、「通」を狙って品を出す~それを買ってくれる方がいたりすると嬉しいものですが、今そういったイベントに出る気は、ちょっとないでしょうか…。

 しかし、何と言ってもこういった屋外イベントの難点は、冒頭に書いた通り天候による影響を大きく受けるということです。最初から雨で中止なら良いのですが、途中から雨が降ったりすると最悪です。また、早朝から開始となる場合が多いのですが、冬の寒さは堪(こた)えますし、夏の日差しも厳しい。軟弱な私は屋外で売ることに慣れていないため、そういった中で商売するのはなかなか大変でした(笑)。

 雨や雪ならある程度諦めがつく~早々に荷物をしまったり帰ったりできる場合もありますが、天候で困るもの、それは「風」だと思います。以前、客として買いに行ったある屋外の骨董市でこんなことがありました。ある年の9月か10月だったでしょうか? 雲はあるものの天気は晴れ。風は少しありましたが、市は予定通り開催されています。私は、あちこち覗きつつお買い得価格の陶器や骨董品を見つけてはポチポチと買っていました。露店を中心に商売する古美術商の中には(高い物は除くとしても)まとめて買出した品を適当に「1個いくら」という感覚で売っている人もいます。こういうお店では、量産品の皿も作家の皿もだいたい同じ価格だったりするため、安く拾うことができるのです。出す方としても、いちいち物を調べる手間が省けますし、掘り出し感覚を作れて良いのかもしれません。

 ともかく、市をぐるぐる周って買い物をしていましたが、そのうち風が強くなってきました。テーブルや木箱に敷いたクロスが捲くりあがるお店も目立ち始めています。しばらくすると、遠くで「ガシャーン」という音が…。「あー、この風だとやってる方は厳しいなぁ」と思いつつ、一通り見たので帰ることにしたのです。強くなりはじめた風の中、荷造りに集中していて周りを気にしていなかったのですが、どうやら辺りが少し騒がしくなってきました。荷造りも終え、「とっとと帰るか」と立ち上がると…。

 骨董市は大変な惨状になっていました。地面に敷くビニールシートやテーブルクロスが飛びまくり、いくつかあるテント(タープ)は、「ズズッ」と動いています。軽い物、あるいは絵など表面積があって風を受けやすい商品は強風に飛ばされていました。シートやクロスが飛ばされると、その上に置かれている物が倒れたり、飛ばされた先で物を倒してしまったりします。あちこちで「キャー」「ガシャーン」「ドカ~ン」という音が聞こえてきました。

 不謹慎な話で恐縮ですが、飛び交うテーブルクロスや新聞紙、舞う土埃、叫び声や物が壊れる音、慌てて右往左往する人を見て、私の頭には「8時だヨ 全員集合」~ドリフのコントが終わった後のテーマ曲が自然と流れ始めました。いや、出店している方にとっては大変な事態でとても笑えないのですが、目の前に見えている光景は、まさに「祭」そのものだったのです。祭囃子ではなくなぜドリフ? という疑問はともかく、私はお祭騒ぎの会場をしばらく眺めた後、風を避けるように地下鉄乗り場へと急いだのでした。

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