・恐怖の小箱

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 古美術商の仕事をしていると、いろいろな物を目にする機会があります。何人かの業者が見ても全く用途がわからない骨董品、変わった素材で出来ている物、何百年も前にこんな便利な品があったのかと驚かされる品。ともかくたくさん見てきましたが、先日恐ろしい物を交換会の最中に見てしまったのです…。

 競りの際、物によって「一山いくら」という売り方がされるのは記事で何度か書いてきました。安物をいくつかまとめて一つの山にする場合、盃なら盃、茶碗なら茶碗と同じ用途の物をまとめる場合、同じ作者や同じ地方の焼物などをまとめる場合などです。安物の山は、一山で千円程度という場合もあります、中に良品が入っていて数万程度まで行く場合もあります。

 話を戻して、ある交換会に値段の付かないような品がいくつかまとめられて出ていました。パッと見、興味のない物だったので詳しく覚えていないのですが、何かつまらない陶器と記念メダルの類、木製の小箱、その他にもあったでしょうか? いずれにしても、どれも1つでは売買の対象とならない物ばかりです。私はお盆を回す先頭付近にいたのですが、私や私の近くにいた人は、ほとんど品を見ることもなく触りもしないでお盆を次の人へと流していました。が、しばらくして「い~」「なんじゃこりゃ~」という声が…。どうやら、先程の一山にあった木製の小箱を開けたところ、何か入っていたようなのです。

 私は「虫かな?」と思いました。長らく放置されたような木箱の中には、ゴキブリや蛾、イモムシの死体が入っている場合もあるのです(たまに生きたゴキブリが出てくることもありますが)。それでとっさに「虫」と思ったのですが、何やら周りの人が少し騒々しくなってきました。私も覗きに行くと…。

 小さな箱の中には、人の形をした何かがありました。そして、針がたくさん刺さっていたのです…。人だかりで人形の素材まではわかりませんでしたが、それはどう見ても「小さな藁人形」でした。しかも、それ以外に小さなお札(ふだ)というか、何か書かれたような紙も何枚か入っていたようです。ともかく、触るのも気が引けるという品でした。ちなみにこの品が入った一山、いくらで売れるのか(そもそも買う人がいるのか)興味があったのですが、知らぬ間に売り番が終わってしまったようで全く記憶に残っていません。

 どういう経緯で小箱が出てきたのかはわかりませんが、恐らく民家かどこかで買い出された何十・何百という品の中に入っていたのでしょう。買い出した後に気付いて、何かとまとめて売りに出したのだと思います。本来なら売りに出すのもどうかと思うのですが、かと言ってこういう物はポイッと捨てづらい…。何かオマケを付けて、5百円でも千円で引き取ってくれれば良しという感覚で売られたのでしょう。 この恐怖の小箱、今でも古美術商の間を回り続けているのかもしれません。

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