・ある鑑定で

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 私がまだ駆け出しの古美術商だった頃、ある鑑定の現場に立ち会ったことがあります。

 鑑定と言っても美術商が値踏みをするとかではなく、ある作家専門の鑑定人が持ち主から依頼を受け真贋を判定するというものでした(その方は美術商ではありません)。その作家には珍しい「掛け軸」を鑑定するところだったのですが、作品には普段見かけることの多いある昆虫が描かれています。

「○○君(←私)、この絵をどう思うかね?」 。まだ駆け出しの私は慌てましたが、多少は知識のある作家だったので落款を見ながら首を捻っていると…。

「○○君、この虫の足を見たことがあるかい? この虫がこういう態勢になってるときは、もっと足にグッと力が入っているものなんだよ。この絵にはそういったところが描かれていないねぇ。この作家が見落とすはずはないよ」。

 私は恥ずかしくなりました。「物を見る」と言えば簡単なことですが、少しばかり知識が付いてくるとやれサインがどうだ、使われている素材がどうだと、本来なら(重要な鑑定ポイントではあるものの)補足として考えなければならない部分を先に見てしまったりします。本当に基本中の基本ですが、品物を見る場合はまず品物そのものを見る、そして作家の心象やメッセージを感じ取る。こういう姿勢が大事だと痛感しました。また、普段何気なく見ている物や自然の風景~昆虫や花、木々、雲、人間、またそういったものの動きをよく心に留めておく事が重要だと、つくづく感じたのです。

 それから品物を見る際の注意点が大きく変わりましたが、以降私の目筋も少しは上がったと感じています。

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