・近所のリサイクルで その3

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 その小さな油絵は、お店の床にそのまま置かれていました。

 普段それらしい品がお店に入った場合、すぐには売りに出さず私が来店した際いろいろ話をして値段を決めたりするのですが、その絵は既に「1000円」で売りに出されていました。私がその絵を手に取ると、レジにはいつものオバチャン。「いやー、社長とも話したんだけど、こんなの素人の絵よ。ヘタクソだし~。○○さん(←私)に見てもらうまでもなく、1000円で売りに出しちゃったわぁ」。 

 私は普段、現代美術以外の絵(日本画・洋画等)をほとんど扱いません。だから知識がないですし見方もよくわからないのですが、そこは古美術商の端くれ。その油絵はどう見ても、「技量のある画家が描いた作品」にしか見えませんでした。ローマ字表記でサインはあるのですが、さすがに作者は不明。しかし額はソコソコ立派で、裏を開ければ作品タイトルや別のサインが確認できるかもしれません。ちょっと古くはなっていましたが、ともかく1000円だし買ってみることにしたのです。

「あらぁ、こんなの○○さんの買う絵じゃないわよ」「いやー、結構良く描かれてますよ。それに、知らない画家でも1000円なら額代にはなりそうですからね」「そりゃそうね、うふふ」。オバチャンは、その小さな油絵を笑顔でレジ袋にズボッと入れてくれました。ペラペラのレジ袋に額装された油絵を入れて持ち運ぶのは初めての経験。安っぽい袋から覗いた豪華な金の額縁が、帰り道ですれ違う人の視線を集めていた気がします…。

 家に帰って、私はすぐに作家を調べました。古くなった額を慎重に外してみると、やはり裏地にタイトルやサインが入っています。手持ちの少ない資料に画家の名は見当たらないようでしたが、こういう時インターネットというのは便利ですね。検索するとアッサリ作者を確認。しかも、何件かヒットしたのです。どうやら、中堅どころの日本人洋画家が描いた作に間違いないようでした。作品は小品ですし、専門外とは言え知識になかった画家。売ったとしても大した価格にはならないでしょう。しかし、ショップにいくつか置いてあった絵の中から、きちんとした画家の作品を見逃さずに買えたという事が私には嬉しく思えました。手頃なサイズだし、飾ろうか、売ろうか…。

 少しの間考えましたが、私の興味は今まで不明だった画家や絵そのものから、その絵がいくらで売れるかという方へどんどん傾いていきました。翌日、私は知り合いの画廊へ電話することにしたのです。
※この話の「その4」は『裏美術売買』に掲載します。

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